ビールの主原料は、麦芽、ホップ、水の3種類です。歴史的なスタイル(例えばゴーゼやブロイハンなど)を除き、ドイツのビールは基本的にこれと酵母以外は使いません。それでも、大麦麦芽に加えて小麦麦芽を使ったり、麦芽の量や焙煎度合いにより様々なスタイルが作られ、楽しまれてきました。 最近ではクラフトビールブームの中様々なスタイルが日本でも楽しめるようになってきました。その中でのドイツのビールの特徴は何といっても「ドリンカビリティ」。決して軽いということではなく豊かな味わいがありながら何杯でも飲めてしまいます。ドイツでも近年のブームの中で様々な奇抜なビールが作られますが、このドリンカビリティの高さはそこでも健在です。 |
ラガービールは「貯蔵庫」を意味するドイツ語Lagerに由来し、下面発酵で低温熟成の工程を経るビールの総称ですが、その名が示す通りドイツと言えばラガービール。しかし、実際にはドイツ南部のヴァイツェンを始め、ケルンのケルシュ、デュッセルドルフのアルトなど地域により様々なエールがドイツでも親しまれています。
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■ジャーマンラガーの種類(下面発酵タイプ) | ||
【スタイル】 | 【特徴】 | 【代表銘柄】 |
ボック Bock |
ボックタイプの特徴はアルコールの高さ。 アインベックがその発祥地で、高アルコールの麦芽の風味の高い美味しいビールが名物で、その発音が由来だと言われています。 アルコール度を高めるために大量のモルトを使用しているため、ホップの 苦味よりも、麦芽の甘味が非常に支配的です。 |
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ドッペルボック Doppel Bock |
断食期間に飲むビールとして作ったのがその始まりです。ビールから食事並みの栄養分を とるために、麦芽を大量に使用しています。 サルバトールが元祖と言われ、語尾の"-ator"が名称に付くビールが多数あります。 | |
アイスボック Eisbock |
クルムバッハのライヘルブロイ醸造所が開発した 高アルコールビール。 製法としては、ドッペルボックを凍らせて、できた氷を除去するためボックの中でも最も高いアルコール度数をマークしています。 甘味の力強さはまるでリキュールを飲んでいるかのようです。シュナイダー・アヴェンティヌス アイスボックはヴァイツェンのアイスボックですが、ほぼこの一択であるためアイスボックとして掲載しています。 | |
マイボック Maibock Helles Bock |
ミュンヘンの醸造家がローストモルトを使うことなしに作った高アルコールビール。モルトからもたらされる甘みが 特徴的でゴールドや明るい銅色をしています。 | |
ドルトムンダー Dortmunder |
国内醸造数ナンバーワンを誇るドルトムンドの地ビール。 チェコのボヘミアンピルスナーに触発され、地元の人の好みに合わせ作ったビールだとか。ホップが際立つピルスナーと比べると麦芽の力強さを感じるビールです。 |
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ヘレスラガー Munich Helles Lager |
ミュンヘン生まれの色の薄いビール。ドルトムンダー同様、チェコのボヘミアピルスナーを現地流にアレンジしてできたビール。 炭酸塩が多く含まれている現地の水質の特徴から、モルトの風味が口いっぱいに広がるビールになりました。 |
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ドゥンケルラガー Munich Dunkel Lager |
見た目とは裏腹、味わいはそれほど濃厚でなく、すっきりとしています。 ヘレスが生まれるまではミュンヘンのビールと言えばこれ。チェコでもこれを作ろうとして偶然ピルスナーが生まれたと言われています。 ホップの苦味と香りは控えめなで麦芽の風味が際立つ濃色ビール。 | |
シュヴァルツビア Schwarzbier |
ドイツ語で黒を意味するシュヴァルツのビールは、 まさに黒ビールそのものです。 ビターな味わいの中にもすっきりとほのかな甘味を感じます。 ケストリッツァーシュヴァルツはシュヴァルツビアの代表格。 あの文豪、ゲーテが愛飲したビールとして知られています。 | |
ラオホビア Rauchbier |
バイエルン州の古都バンベルクで中世から作られている伝統的なビール。 麦芽を作る工程で、焙燥の際にブナの木のチップでスモーク (ラオホ)されることからこの名前がつきました。 燻製になった麦芽は、その香りと燻した茶色をビールに引き継ぎ、 独特の味わいを引き出す。甘味が強くフルボディ。 クセがある味わいは、燻製同様やみつきになるかもしれません。 | |
ピルスナー Pilsner |
1842年にボヘミア(チェコ)のピルゼン市(プルゼニュ)で 誕生したこのビアスタイルをドイツ風にしたのがジャーマンピルスナー。ボヘミアンピルスナーに比べ色合いが薄く、ドライな味わいが特徴です。 ポップの苦味とのど越しのよさがどんな料理でも引き立ててくれます。 日本にあるビ-ルのほとんどもこのジャーマンピルスナーだと言われています。 | |
メルツェン・ オクトーバー フェストMaerzen・Oktoberfest |
冷蔵設備が整っていない時代、ドイツではビールを醸造する期間が10月~3月までと制限されていました。その3月に由来する名前のビールがメルツェン。ちょっとだけアルコール度数も高めでしっかりとした味わいのビールです。オクトーバーフェストビールもこのタイプ。ミュンヘンの醸造所のビールはオクトーバーフェストビールと呼ばれます。 |
■ジャーマンエール(上面発酵タイプ) | ||
【スタイル】 | 【特徴】 | 【代表銘柄】 |
アルトビア Altbier |
ノルトライン・ヴェストファーレン州デュッセルドルフで 18世紀頃から作られている 上面発酵型ビール。 アルトとはドイツ語で「古い」を意味し、昔ながらの方法で作られていることからアルトと言われるようになりました。 色合い濃く、強い苦味が特徴的で、モルトの香りが支配的なスタイルのビールです。 | |
ヴァイツェン(へフェヴァイツェン) Hefeweizen |
ヴァイツェンの中でも特に酵母をろ過していないものを特にへフェヴァイツェンといいますが(ヘフェ、ヘーフェ=酵母)、ドイツのヴァイツェンと言うとこのスタイルを指します。 ボディは白濁、ホップの苦みはほとんど感じられず、泡立ちがとても豊か。 また、バナナやクローブを思わせる豊かな香りとまろやかな味わいが特徴です。 飲む際には、ビールが少し残った状態でびんの底に溜まった酵母を軽くかき混ぜてから飲むことがポイント。 さらに豊かな口当たりを楽しむことができます。 | |
ドゥンケル
ヴァイツェン
Dunkelweizen |
小麦とは別にダークモルトを使用していることから、へフェヴァイツェンに比べ色合いが濃く、モルトの味わいに満ちたリッチなビールに仕上がっています。 | |
クリスタル
ヴァイツェン Kristalweizen |
ボトリングの前にろ過され、余分やイーストやたんぱく質を
取り除くため、通常のヴァイツェンに比べ濁りが少なく、
ボディは透き通っています。味わいはへフェヴァイツェンに比べスパイシーですっきりとしている。夏の季節商品である場合もあります。 |
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ヴァイツェンボック WeizenBock |
色合いは淡い金色から茶色で、アルコール度数が高いことが特徴です。ボックビールのヴァイツェン版で、ヘフェヴァイツェンとドッペルボックを合わせた特徴を持ちます。 麦芽風味が強く、まったりとした味わい。このスタイルはアヴェンティヌスが元祖と言われています。 | |
ケルシュ Koelsch |
上面発酵・低温熟成で作られたケルンの地ビール。今では名称保護でケルンで作られたものしかこの名称を使えません。他の地域で作られたものは「ケルシュ・スタイル・エール」等と呼ばれます。 ホップ・モルトともに香りは少なく、ホップの苦味も弱めです。 非常にさっぱりとした味わいで、ドリンカビリティが高いことが特徴。 現地では、わんこそばのように、小さなグラスで何杯も飲むのが定番です。 | |
ベルリナーヴァイセ Berliner Weisse |
かき氷のようなシロップを混ぜる飲み方で有名だったスタイルですが、元々はベルリンの伝統的なヴァイツェンビールです。 特徴は乳酸発酵による酸味で、フルーツとの相性が良いことから最近のクラフトビールブームで多くの醸造所で作られるようになりました。 中でも外せないのがベルリナーヴァイセ専門醸造所「シュネーオイレ」のベルリナーヴァイセで、50年前のボトルから取り出した酵母(ブレタノマイセス)も利用して昔ながらの風味を再現したもので、ベルギーのランビック同様熟成が楽しめます。 | |
ゴーゼ Gose |
今では世界遺産都市のゴスラーで作られていたビール。その後ライプツィヒを中心に醸造されていました。 特徴は食塩による塩味とコリアンダー、そして乳酸発酵による酸味です。 アメリカでのクラフトビールで見直され始めたスタイルです。 | |
リヒテンハイナー Lichtenhainer |
燻された麦芽と乳酸発酵の酸味が特徴で、クラフトビールブームの中復興が相次ぐ独特のスタイルです。 | |
ブロイハン Broyhan |
ハノーファー発祥の歴史的ビアスタイル。麦芽とスパイスの風に加え、さわやかな酸味が特徴。 |
■イギリスのビール | |
【スタイル】 | 【特徴】 |
スタウト stout |
大きくスタウトとしてカテゴリー分けされるビアスタイルは何がスタウト!! (強い、濃い) かにより、味わい・香り・色…それぞれに特徴が異なってきます。 |
ドライスタウト | 代表銘柄は日本でも同じみアイルランドのギネスビール。ホップの香りはほとんど感じられず、焦がした麦の苦味が特徴。 濃厚で色濃く、ドラフトアイリッシュスタウトは内蔵されている窒素ガスによって 白くてキメの細かい クリーミーな泡が立ちます。 |
オートミールスタウト | オートミールスタウトはスイートスタウトの変化形で、ビールのボディを強くしたり口当たりを よくするために、 ローストモルトの一部分をオーツ麦にして造られたビール。 元々はイギリスで、スタウトビールが毎日の食事の栄養の一部と考えられていた 当時に醸造されたのが始まり。 |
インペリアルスタウト | インペリアルスタウトとは、普通のスタウトのアルコール度 を強くしたもので、 元々はイギリスから ロシアやバルト諸国など気候が厳しい国への輸出にも耐えられるように造られたのが始まり。 このスタイルのビールは濃く、不透明な黒色をしていて、6-7%の高いアルコール度数である のが特徴。 焦がしたココアやドライフルーツを思わせる甘い味わいがします。 |
フレーバースタウト | 何らかの方法で甘く・またはドライな感じに風味付けをされたスタウト。 ダークフルーツ・コーヒー・チョコレートで味付けされているのが一般的です。 |
スウィートスタウト | 1770年代にアイルランドで生まれたエール。 甘味の強いが、他のものに比べアルコール度数は低め。チョコレートモルトや乳糖が使用され、 チョコレートやキャラメルのような 風味を持つのが特徴。 別名、ミルクスタウトやクリームスタウトとも呼ばれます。 |
ペールエール | 1630年頃にバートン・オン・トレントで生まれたビアスタイル。 ダークゴールドから銅色をし、ホップの香りと苦味が特徴的。 ほのかにフルーツ系の香りがします。 パブで提供される このスタイルのビールは「ビター」と呼ばれます。 |
ブラウンエール | 造船の街ニューキャッスルで19世紀初頭に誕生したビアスタイル。 ホップの産地から遠かったために、使用するホップの量を抑え、逆にモルト風味を豊かに したビールに仕上がりました。 そのため、ペールエールに比べ苦味が弱く、 甘みに満ちた、濃い色合いのビールとなった。カラメル的な香りがします。 |
インディア ペールエール | インドがまだイギリス領とされていた時代に、現地に滞在する英国人向けの輸出用ビールとして開発されました。 船での運搬中の腐敗を防ぐために防腐効果のあるホップを大量にしたことから、 ホップの苦味と 香りが非常に強いビールに仕上がっています。 またこうした理由から、アルコール度数も通常の エールに比べ高い。色合いはダークゴールドから銅色をしています。アメリカで柑橘の香りのホップを大量に使ったIPAが人気となったため、区別するためにこちらはイングリッシュIPAと呼ばれます。 |
マイルドエール | イギリスビールの中では最もアルコール度数の低いビール。 ドイツのケルシュ同様、現地では水代わりに飲む人も多く、ホップの香りや苦味も非常に軽く、飲みやすくなっています。 ダークブラウンの色合いをしたものが主流です。 |
オールドエール | イギリス全土で醸造されている長期熟成のビール。 長時間(ワイン並みに)熟成させるためにアルコール度数は高めです。 麦芽の甘みとカラメルの香りがあり、ホップの苦味・風味は非常に弱く、ブラウン系の色合いをしています。 |